日経225 miniに関するお話
プライベートバンキングを積極的にやろうと地元の小さなプライベートバンクを買収したが半年もたたないうちにプライベートバンカーと顧客が逃げ出して計画が霧散してしまった日系の銀行もある。
預かってはいけないカネを預かることは規則違反である。
客が預けたいという時も「お預かりできません」と言わなければならないこともある。
このような話はすぐにトップに伝わる。
新しい客ができ、入金があった。
“カネには臭いはない”という。
しかし、なんとなく変だ。
こういう時は不思議なことにすぐにトップから間合わせがある。
トップの鼻はすごい。
「その人のカネは預かれない」。
担当者は指示の通り、「ノー」と言わなければならない。
最近日本に出張した折、こんなことがあった。
ある人の紹介で若い女性、30歳ちょっと出たくらいのゾッとするような美人だったが、父親の使いということでわれわれの東京の事務所に訪れ、スイスに口座を聞きたいと言う。
金額はかなり大きい。
話を進める前に一度お父さんに会いたい、と申込む。
翌日電話があって、指定された住所に出かけた。
番地を頼りにやっと探し当てた雑居ビルの3階にて「商事」があった。
扉を開けて中に入ってみると、なんとなく雰囲気が違う。
小さい応接セットの他にスチールの机が3つあるが、上に帳票類も書類もないのである。
出てきた若い男に名前を言って「社長」と面談の約束がある旨を伝えると、ちょっとお待ちを」と隣室に消えた。
やがて、前日の“美人”がにこやかに出て来た。
「すみません、父が急用で出掛けてしまいまして」「お嬢さんを疑うわけではありませんが、お客様と直接会ってご意見をお伺いし、確認するのが私ども銀行の務めですので…」「分かりました。
父に伝えます」もやもやした気分のまま雑居ビルを出た。
“お父さん”の職業がさっぱり分からない。
何億円もスイスの銀行に預けようとしているのに、こんな都心の雑居ビルで一体何をやっているのだろうか。
スイスへ帰る日も近づいている。
夕方、電話があった。
例の女性の声で、「父がお目にかかると言っています。
明日10時に00ホテルのxx号室に来て下さい」今度はホテルだ。
しかも、都心の超高級ホテルである。
ますます不安になってきた。
しかし、相手は何億の見込客である。
翌日、約束の時間に部屋をノックする。
50歳代と思われる長身でやや細身の体型の紳士が迎えてくれた。
日に焼けて浅黒く、グレーのダブルの背広が似合っていた。
あまり“社長さん”らしくない。
話ぶりは柔かだが、目が笑っていない。
政治家によくある目つきだ。
どんな仕事をしているのか、家族構成はどうなっているのか、こちらの聞きたいことをいろいろな角度から質問するのだが、どうもはっきり分からない。
ヨーロッパに旅行したことや、景色が良かったとか、なにが美味かったとかは鏡舌になるが、肝心の話になるとすぐにそれてしまう。
社長個人の履歴や事業の内容、歴史なども当然知っておかねばならないのだが、これなども“若い時はいろいろ苦労した”で終ってしまう。
われわれのプライベートバンクの世界では、いわゆる「M資金」や「アフリカ資金」の話などゴロゴロ入ってくる。
日本でも「M資金」に踊らされた人の話はいくらでもあろう。
一部上場の大会社の社長が、しかもインテリで有名な人がこれに引っかかり、社長を辞めさせられた話はスイスでも話題になった。
われわれは当然注意する。
マネー・ロンダリングも注意せねばならないことだ。
日本で年々麻薬取引が増えている。
密輸、売春、それに債権取りたて等、“黒いカネ”がうようよして、表に出る機会を狙っている。
1時間あまり話を聞くが、家族は奥さんと娘1人と息子1人、金貸しが主な仕事らしい。
カネはいつでも用意できることくらいしか分からなかった。
これでは口座は開けない。
さらに調査が必要だ。
これを東京の駐在員に頼んで日本を後にした。
1週間後に東京の同僚から連絡があった。
社長は“その筋”の人であったので、預金は丁重にお断りした、ということでホッとした。
本当の“娘”はアメリカに留学中とのことだった。
われわれの銀行は拠点を日本に持っている。
スイスに運ばれるプライベートバンキングの資金はこれらの支店を通して送金されるケースと、顧客本人が直接スイスに持参するケースがあるが、比較的小さい金額は後者が多い。
“観光がてら”というのが一般的だ。
香港やシンガポールから運ばれる場合も結構ある。
顧客、あるいは見込客からの電話は、国際電話が便利になったおかげで頻繁にかかってくる。
しかし、フランスとか中南米からはよく公衆電話が使われる。
これらの国では“盗聴があるからだ”と顧客は説明している。
スイスからは自宅にかけないでくれ、と言う客もいる。
その点アジアは盗聴がないらしい。
電話を気にする人は少ない。
もちろん、決められた番号以外はかけない。
資産の運用と管理に限り、話はスイスのプライベートバンク1行ですべてカバーできる。
信託、年金、税金、相続、不動産、絵画、投資なんでも相談にのれる。
あくまで個人客へのサービスで、個人対個人の信頼の世界だ。
イギリスやアメリカのプライベートバンクは最近はチームプレーが多い。
個人の客よりも会社(法人)の顧客が多くなって、サービスの性格が薄れ、ビジネスライクになっているようだ。
資金の運用は基本的に投資信託で、行っている。
運用は子会社の資産運用会社がやっているが、運用成績は非常に良い。
ファンドの内容は簡単で分かりやすいものが良い。
確かに最近はデリパティプ(金融派生商品)を使ったものが多くなっているが、顧客に対しては要点をきちんと説明することが大事だ。
むずしいことを言えば、客は不安になる。
リスクのあるものをすすめる時は要注意だ。
客は多少リスクはあっても利の大きいものを要望してくることがある。
そういう時、デリパティプがよく話題になる。
われわれはデリパティプを奨める時は「結果が悪くなった時のこと」から説明する、と同時に顧客から一札もらう。
これは「結果が悪くなっても責任は私にあり、銀行にはありません」というものだ。
たいていの客は嫌がるが、一札入れない限りデリパティブは買付けてはいけないことになっている。
カストディー業務はプライベートバンクの重要な仕事である。
これがしっかりしていると客も安心できる。
一任勘定は運用がむずしいが、裁量の幅が大きい。
責任も重いが、市場変動に機敏に対処できる。
長期の資産管理は別として、資金運用は年々複雑に、ますますむずかしくなってくるので、プライベートバンカー人では手には負えなくなってきている。
運用の選択肢を拡げるためにもこれからは「運用」をアウトソーシング(外部委託)することがポイントになってくる。
外国運用のファンドでも日本できちんと説明できれば売れると思う。
スイスで運用する日本株のファンドは運用成績で日本の投信に決して負けない。
基本的にはその国で運用するその国のフアンドが一番良いとは思うのだが……。
外為など瞬時を争う取引は、コンピューターの発達で非常に便利になっている。
この間も、ある顧客が電話で1億円でスイスフランを買いたいと言って来た。
この部屋のそこの端末にいつも最新のレートが出ている。
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